まずまず・・・レジャー条例
2003年5月8日
  琵琶湖の生態系や環境の保全を目指し、県のレジャー利用適正化条例が4月に施行されて1カ月が過ぎた。釣り上げた外来魚のブラックバスやブルーギルの再放流(リリース)禁止や、プレジャーボートの航行規制などを盛り込んだ新条例は、どれほど浸透し、効果を上げているのか。国松善次知事は7日の記者会見で「まずまずの立ち上がり」と評価したが、条例の実効性を高めるには課題も多いようだ。一方、条例の影響で売り上げが落ち込む釣具店やボート業者は生き残りをかけ、対策に追われている。

〈釣り人〉外来魚、回収箱はどこに?
  「外来魚をどこに持っていったらいいの?」

  大型連休中、大勢の人が詰めかけた大津市内の琵琶湖岸。釣り人からは、そんな戸惑いの声が相次いで聞かれた。

  家族7人で大阪府摂津市から来た自営業の男性(58)は連休中の3日、琵琶湖文化館の西側でブルーギル約10匹を釣り上げた。毎年1、2回は釣りに来ており、これまでは釣った外来魚を湖に放していたが、今年は知人から「リリースはあかん」と聞かされ、バケツを持って来た。しかし、男性は「回収箱の位置が分からない。協力したいのに……」と困惑する。

  ポリ袋を用意し、近くで釣っていた大阪市の男性会社員(49)も「回収場所が案内されていない。近くの釣具店で聞くしかない」と話した。

  県はこれまでに、湖岸の公園や緑地の33カ所に回収箱を、漁港など13カ所に回収いけすを設置した。しかし、「回収場所が少なすぎる」「位置が分からない」と指摘する声が多い。

  大津市の市民会館前から近江大橋を越えた付近まで約4キロの間には回収箱が10カ所にあるが、その間隔は30メートル〜1・5キロとばらばら。現地に案内看板などはなく、釣り人自身が探すしかない。毎週釣りをするという大津市の男性(42)は「地元の人間が場所を教えていくしかない」と話す。

  県は回収箱などの位置を県のホームページ(HP)で紹介してきたが、7日からは携帯電話向けHPでも位置が確認できるようにした。


〈釣具店〉 経費削ってバス以外も
  「コアユ 仕掛けあります」。4月中旬、そんな張り紙が大津市内のルアー釣り専門店に張り出された。店内には、従来のバス釣りの道具だけでなく、アユやコイのえさ釣りの仕掛けなどが並ぶ。「4月の売り上げは前年比4割減。心配していたリリース禁止の影響が現実になった」と店長(50)はこぼす。

  リリース禁止が議論され始めた昨年6月ごろから売り上げが大きく落ち込み、今年2月に従業員を1人減らした。広告費削減などで経費を削る一方、えさ釣りの道具の販売にも踏み切った。別のバス専門釣具店でも、4月の売り上げは前年比2割減になるといい、キャンプ用品の取り扱いを始めた。経営者(34)は「バス関連の商品比率を50%まで減らす覚悟だ」と話す。

  一方、湖東地域の貸しボート店は3月から11月まで毎月、客が釣り上げたバスの大きさで上位1〜3位に賞金(1位は3万円)、4〜10位に賞品を贈る企画を始めた。店長は「経費はかかるが、リリース禁止でめいっている釣り人の気持ちを盛り上げ、少しでも利用者を増やしたい」と話している。


〈知事・県〉リリース禁止9割認知
  国松知事は7日、県庁での会見で、新条例に関する県のアンケート結果を発表し、「一定の理解をいただいている」と語った。

  県は4月29日、琵琶湖岸で釣り人ら282人にアンケートを実施。プレジャーボートの航行規制水域があるのを「知っている」と答えた人が約50%にとどまった一方、リリース禁止を「知っている」と回答した人は約90%。また、リリース禁止を含む琵琶湖での新ルールに「ぜひ協力したい」「やむを得ない」と答えた人は合わせて96%にのぼった。

  また、回収箱と回収いけすでの外来魚の回収量は4月1日〜5月6日に約1224キロ。このうち連休期間中(4月26日〜5月5日)だけで約668キロと、全体の約半分を占めた。県琵琶湖レジャー対策室は「多くの人がリリース禁止に協力してくれている表れ」と受け止めている。

  一方、会見で「回収箱が少ない」との釣り人の声があるとの指摘に、国松知事は「今後増やしていきたい」と答え、「夏に向けてこれまでの経験を生かし、ルール定着に努めたい」と述べた。
朝日新聞


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