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高島沖にホシツリモ 琵琶湖に「幻の藻類」
2012年8月21日
 ◇神戸大などが調査 北湖の良質な環境確認

 高島市沖の琵琶湖で昨年7月、これまで国内では4湖でしか確認されたことがなく、河口湖以外では絶滅したと考えられていた車軸(しゃじく)藻類の一種「ホシツリモ」が初めて見つかった。先月28、29日には神戸大が1年ぶりに潜水調査を実施、約30個体のホシツリモを採取した。周辺には他にもヒメフラスコモなど希少種の群生があり、良質な生育環境が確認された。【石川勝義】

 ■正体みたり
 先月末に調査に当たったのは、神戸大大学院理学研究科の坂山英俊講師と加藤将特別研究員ら5人。ホシツリモは当初、独立行政法人水資源機構・琵琶湖開発総合管理所(大津市)が行った環境調査で「正体不明の藻」として発見され、神戸大がDNA調査でホシツリモと特定した。
 神戸大メンバーは同月28日、チャーターした漁船で発見現場の高島市新旭町饗庭の沖約900メートルに向かった。
 付近の水深は約2〜3メートル。操船した同市の内藤貞七さん(81)は「普段より透明度が低い」と話すが、それでも底が見え、所々に1メートル程の水草が生えている。メンバー4人が水中ボンベを背負って湖に潜り、目で確認しながら藻の採取を始めた。
 開始後間もなく、オトメフラスコモやヒメフラスコモなど車軸藻類の仲間が次々と見つかった。これらはいずれも環境省のレッドリストで絶滅危惧1類種に指定されている。船に残った坂山講師は顕微鏡をのぞいて次々に藻を分類し、「車軸藻類はきれいな水にしか生えない。これだけ見つかるのは水質が良い証拠」と話す。

 ■環境悪化で減
 車軸藻類は、茎のような主軸に「輪生枝」という輪状の枝が付いているのが特徴。上から見ると軸と輪生枝が車軸のように見えるため命名された。国内では70年代の高度経済成長期の環境破壊で減少し、約80種のうち4種が絶滅、ホシツリモなど52種が絶滅危惧1類種となっている。野尻湖、芦ノ湖、山中湖で絶滅したホシツリモは、03年に河口湖で再発見されるまで一時は「野生絶滅種(栽培・培養状態のみで生存)」とされていた。
 今回の調査でも、個体数が少ないためかホシツリモはなかなか見つからなかった。ようやく発見したのは開始約1時半後。GPS(全地球測位システム)で記録していた昨年7月の発見場所よりも、約100メートル湖岸寄りに生えていた。河口湖でも年によって生える場所が違うという。翌29日の調査では発見できなかったが、神戸大は今後も湧き水の多い北湖西岸を中心に調査を続ける方針だ。

 ■分布点在なぜ
 希少な藻が数多く分布していることが判明した一方、琵琶湖では藻刈りも盛んに行われている。ホシツリモの発見を受け、藻刈りを実施する県は神戸大から発見場所のGPSデータの提供を受けた。発見場所の近くでヒシモの刈り取りを行っていたからだ。
 県琵琶湖政策課によると、南湖の藻刈りは根こそぎ行うが、北湖は表層から深さ1・5メートルまでの刈り取り方式で、大きな影響はないという。藻刈りの前には植生調査があり、ネジレモやホシツリモなど希少種6種が見つかれば、その周辺の刈り取りは避けている。
 地理的に離れている国内のホシツリモの分布は一見謎に思えるが、加藤研究員によると、分布はヨーロッパにも点在しているという。いずれも透明度の高いきれいな湖である点が共通している。加藤研究員は「ホシツリモはクローンのように栄養増殖で増え、有性生殖機能を失ったかのように思える。ごくまれに水鳥の足などに引っかかって移動に成功し、生育環境に合った場所で増えたのではないか」と推察している。
毎日新聞


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