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裂けた実を探せ 今津でイチジク狩り
2016年9月23日
 高島バイパスから西近江路を車で走ること約十分。田畑や民家が並ぶ高島市今津町弘川の一角に「いちじく園」はある。車を止めてドアを開けると、甘酸っぱいイチジクの匂いが辺りいっぱいに広がっていた。同園を営む前川嘉次(よしじ)さん(80)は「いつもいるから、匂いなんてわからん」と笑って出迎えてくれた。

 さっそく収穫へ。七百平方メートルの畑には二メートル近い木がみっしり並び、ピンポン球大から握りこぶし大のイチジクがごろごろとなっている。「おいしい実はお尻の方が赤く、はじけて(裂け目が入って)いるんや」。前川さんの助言通りに探すと、裂け目から果汁の滴る実を発見! 「茎を親指と人さし指でつまんで、手前に引っ張って」。ゆっくり動かすと、茎が裂けるように折れて簡単に取れた。

 採れたのは、少しの力でつぶれそうなほど熟したイチジク。「店頭で食べ頃になるように」と農協出荷分には青いものを選ぶため、園には熟れたものほど残っている。

 一口頬張った。「柔らかーい」。実はクリームのように滑らかで、かまなくてもつぶれる。プチプチとした食感と甘さは、もう絶品! 前川さんも「直前まで木になっていた実ほどうまいんだ」と太鼓判を押した。

 同園でイチジク栽培を始めたのは七年前。地元の農協などが「イチジクを高島の特産品に」と栽培者を募集したのがきっかけだ。現在、市内で三十人ほどの農家が栽培している。しかし、いざ始めてみると、間引き代わりに一定数実が付いた枝を切ったり、実がぶつからないよう枝を一本一本固定したりと、年間を通じて世話に手間がかかった。それでも「実がなるたびに充実感がある」と、一人で栽培を続ける。

 四年前には市の観光協会を通じて収穫体験ができるようになり、無人販売所も設けた。この日も福井や大阪など他府県ナンバーの車が続々。「どれがおいしい?」と尋ねられた前川さんは「どれも食べ頃。ちょっと冷やすだけでとても甘くなるよ」とアドバイス。「おいしいって喜んでもらうのが一番」。イチジクのような柔らかい笑顔で、手塩にかけた実を眺めた。
中日新聞+プラス


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